手から力が抜け落ちる。
持っていた白い花が大地に散っていく。 僕は動けない。 目を見開いて唯見つめた。 「しん……きゅー?」 彼女は横たわっていた。 動かない。 黒のドレスを身に纏った彼女は、赤い血を流して倒れていた。 ふらりと体がよろめく。 僕は地に膝を着く。 恐る恐る手を伸ばす。 冷たい、温もりの無い、骸。 彼女は、死んでいた.…… 「う、うあああぁぁぁぁぁぁああああああ!」 あぁ、神様! 此れが裁きなのだろうか! 彼女を愛してしまったのは罪なのですか! 愛し合ったのは罪なのですか! 此れは、人を愛し堕ちた僕の、私の罰なのですか! 冷たい、愛しい人の亡骸を抱きかかえたまま私は叫ぶ。 失った、失ってしまった。彼女は失われた。 あぁ、だったら、僕は私はっ……! My dear, lying cold. I will spend all my life for you as I swore on that day. My sin against God... All my acts of treachery should be paid by my death, so I will die for you... I believe, that's my fate. 詠う、震える声で。 私は彼女に、口付けを与えた。 とくん。心臓の鼓動が聞こえる。 痛みが感じない。 四肢の感触がある。 如何して私は生きているのでしょうか。 私は、裁きの矢を受けて……死んだはずです。 暖かい腕で抱かれてる感触がする。 ゆっくりと目を開く。 其処に……彼女が居た。 遠い日に私が拒絶してしまった、居なくなった彼女が。 彼が着ていたはずの服を纏って。 安堵のような色を湛えた瞳が私を見つめて…… 微笑みました。 そして……硝子の割れる音と共に、消えてしまったのです。 「え、し……き?」 目を見開いて私が見つめる先に、彼女は、彼は居ませんでした。 ただ、一枚の、漆黒に染まった羽根が舞い落ちます。 あぁ、理解しました。分かってしまいました。 彼は、彼女は、私を救うために消えてしまったのです! 「あ、あぁ、いやあああああああああぁぁぁああああ!」 唯一残った、彼の彼女の存在の証である黒の羽根を両手で包み込み、私は、泣き崩れました。 神様、私は赦されない罪を犯してしまいました。 私は、彼女を、シキを確かに愛していたのです。 けれど私は天使であるシキを堕天させてしまったのです! それを、最後の瞬間まで気付けませんでした。 あぁ、神様。私は酷い女なのです。 彼女を好いていた私は拒絶を示してしまい、彼女を堕天させてしまったのです! 挙句の果てに命まで奪ってしまいました。 あぁ、神様、どうか、お願いです。 裁きなら私が甘じんて受けます。 だから、だからどうか、彼の方を帰してください! どうか、どうか、もう一度めぐり合わせてください、 お願いですっ……! ――神様っ! |