聖なる誓いの場所に、私は将来を誓った方と共に訪れました。
神様、御免なさい。私はあの日から忘れられないのです。 俯いたまま、手を組んだまま、私は懺悔します。 隣に彼が居るのに、目の前で神父様が話しをしてくださるのに。 御免なさい、神様。私はもう分からないのです。 本当に愛しているのかどうか、分からないのです。 『……御免なさい』 悲しい声と共に彼女は消え去りました。 残ったのは一枚の真っ白な、穢れの無い羽根。 その瞬間、彼女を失いました。 其の時、私は自分の心を見失いました。 彼女に口付けされたのです。 私は同性である彼女に口付けされたのが恥ずかしくて、彼女を拒絶してしまいました。 そして、彼女は居なくなってしまいました。 私の目の前から。 私はアレから彼女に会えません。 それが悲しくてならないのです。 神様御免なさい、私は、私の本当の気持ちが分からないのです。 どうして今こうして悲しいと感じるのかすら分かりません。 友達をあんまりにもあっけなく無くしてしまったのが悲しいのか、 それとも…… ふと、一陣の風を感じて、私は顔を上げました。 吹き抜けてきた先が気になって私は其処を見つめました。 それに気がついた彼が外を見たいと勘違いしたのか、見ておいでと優しい声と眼差しで言ってくれました。 私はそれに甘えて外へと通じる道を通って…… ――其処で儚い瞳で笑う不思議な少年と出会いました。 あぁ、御免なさい、神様。 私は、一目で彼を愛してしまいました。 そのまま私達は手に手を取り合い、逃げ出してしまいました。 焦がれたようにお互いを求め合いました。 過去の誓いすらも侵していくように愛し合いました。 幸せを二人で分かち合いながら、私達は花畑で将来を誓い合いました。 愛らしい花で出来た婚約指輪を左手につけて、 手を絡めあって、 二人で笑いあいました。 『大好きです、トラップさん』 脳内に蘇るのは綺麗な微笑みを浮かべる彼女だ。 愛しい彼女、愛らしい彼女。 全てを賭けてでも守りたいと想った。 ずっと、何時までも一緒に居ようと俺達は笑いあった。 微笑む彼女を俺は守っていくんだと、誓った。 その夢は、誓いは、あっさりと、あっけなく壊れてしまった。 最後に見たのは涙を零した彼女。 銃を手に、欲望のまま堕ちて行った彼女だ。 壊れた、失われた。 ――奪われてしまった。 地上に降り立つ。 白の礼服を身に纏ったまま、俺は禁忌の箱を開けた。 目の前には黒に染まった花嫁。 幸せそうに微笑んでいる女。 それを見るだけで憎悪が湧き上がる。 彼女は失われてしまったのに、如何して奪った彼女が幸せそうにしているのか! 許さない、許せない、赦してたまるか! ゆっくりと振り向く彼女に俺は手に取った其れを突きつけ、引き金を引いた…… コツ…… 音が聞こえました。 私は振り向き、見えたのは…… 青色の髪に白い十字のついた服を着た青年。 そして、憎悪に満ちた瞳と、鈍色の…… ――ドォン! 瞬間身を貫いたのは痛みです。 胸を突きぬけていった痛み。 瞬間理解しました。 あぁ、此れは――裁きの矢なのですね。 |