分かり合えたのは嬉しい。
素直にそう思う。 でも、どうやって逃げようか? 私は大丈夫でも、 彼は私のせいで結構な重症中だ。 彼と一緒だったら何処までも逃避行は出来ると思うけれども。 目先までやってきた追っ手から逃げるのは、難しいと思う。 「如何しよう?」 「大丈夫だとおもうぞ」 不安そうな私の問いに、 彼は笑いながら言った。 視線は上空へ。 其れにつられ私も視線を上げる。 漆黒の影が居た。 翼を羽ばたかせながら、服と髪を風に躍らせながら、彼はいた。 「紫苑?」 「アイツ紫苑って言うのか……」 「知ってるの?」 「俺が聞きたいな、其れ」 「一応知り合い」 「そっか。俺からしてみると、恩人だな」 「どういう意味?」 「アイツが俺を此処に連れてきてくれたんだ」 「え?」 轟音が響いた。 地響き。 視線を彼から空へ、そして前方へ。 追っ手が吹き飛ばされる。 いや、押しのけられている? 何かよく分からない力が作用しているのか、追っ手達は地に膝をつき、 持っている物を地面に立て、飛ばされないようにしている。 それでも吹き飛ばされる人が出る。 もしかして、紫苑? 「行くぞ」 「え、でも」 「アイツが其処であぁしてるって事は、俺達に逃げろって事だろう。だったら逃げようぜ!」 「何処に向うの?」 「何処でも良い! シンキューと一緒だったら、俺は何処でも生きれる!」 私の手を掴み、彼は走り出す。 とても怪我人だとは思えない行動だ。 というか、怪我を負っている人の行動だとは思えない。 でも、いいや。 気になる事は後から聞くとしよう。 時間は一杯あるみたいだし。 これからはずっと一緒なんだから。 知りたい事も聞けば良いし。 悩みがあったら一緒に悩めば良いよね! 足を速め、後ろではなく隣に並ぶ。 手を繋ぎながら、私は彼と並んで駆ける。 右に視線を動かす。 眼が合った。 自然と微笑みあう。 そして、眼前を見据え、 逃避行へ。 さぁ、ながいながい旅路の始まりだ。 今度はきっと……幸せな旅になれる。 |