暗い夜の中を幾人の男が走る。
大きな荷物を抱え、足をもつらせながら走る。 彼らの顔には焦り。 月明かりも星の煌きも雲に遮られている。 故に彼らの元に光は一切無い。 されども彼らは足元を気にする事も無く、ただただ我武者羅に走り続ける。 まるで何かから逃げているかのように。 定かではない道を、当ても無く、恐怖に駆られるままに。 振り返らずに。 まるで得体の知れない何かに追われているかのように、走った。 不意に風を切り裂く音が、 次の瞬間、最後尾を走っていた男が崩れ落ちた。 何かに足をとられたのだ。 他の面々も思わず立ち止る。 倒れた男は恐怖を浮かべたまま目の前に立っている仲間達に手を…… 悲鳴が上がる。 幾つ物悲鳴が。 助けを求め、伸ばされた手は虚しく大地に落ちている。 何も知らないままただ恐怖を抱いた男は意識を断ち切られたのだ。 それを目撃してしまった他の面々は持っていた荷物を投げ出し、走り出す。 投げ出された荷物の蓋はその拍子にはずれ、中から転がり出たのは子供。 彼らの商売道具。 ソレを気にする事も無く、本能のままに彼らは走る。 一陣の風が吹く。 彼らの真ん中を走り抜ける影。 なすすべも無く倒される人々。 風が通り過ぎれば其処には立っているものは影以外無く、 ただ静寂のみが残った。 唯一即死を免れた男は仰向けになったまま最後に見たのは。 風に引き裂かれた雲の合間から覗く満月と…… 顔の右部分を覆う仮面をつけた―― |